相続について

相続対策あれこれ

相続対策には、事前対策事後対策があります。

ここでは、

  • 事前のトラブルの防止(事前対策)から、
  • 実際に相続が発生したときの節税対策(事後対策)まで

詳しく解説していきます。

 まずはトラブルを防止する

トラブルを予防するために効果的な方法の一つが、生前贈与です。

生前贈与は、生きているうちに相続に対する自分の意思を明確にするという意味では遺言と同じ効果が
あります。遺言と異なるのは、ご自分の財産を実際に与えるという行為を伴うということです。

贈与者本人は自分の意思で与える事を確実にすることができ、また贈与時点において
その理由や気持ちを直に伝えることも可能です。それに、それを受けた人も、
感謝の気持ちを直接伝えることができます。

贈与税に比べての相続税の特徴は、基礎控除・配偶者に対する税額減税措置・小規模宅地の
特例などさまざまな軽減策が取られていることです。また、生前に贈与を受けながら、
相続時精算課税制度を選択して、課税関係を相続発生時まで先送りすることも有効です。

この制度は贈与者が65歳以上の親で、受遺者が20歳以上の子である推定相続人のである
場合に、贈与財産の価額から特別控除として受遺者ごとに2,500万円が、
相続時に精算されるというものです。 

遺言の効用

相続財産は、遺言者本人の物です。

生きている間はご自分が自由に処分できたはずですし、ご自分の死後、
財産を誰に、どの位譲るということに関しても、遺言者の自由です。

つまり、遺言は遺言者の最終意思として最大限度に尊重されるべきであり、その意思が明確な場合は、相続人はその意思に従って財産の分配を受ける事になります。

相続人は遺言者の意思に反する財産争いをすることはできないはずです。

遺言ではご自分の意思にて財産の配分等ができますが、
遺言には方式や要式に規定があります。

法的な不備があると遺言をする意味がありませんので、財産の内容やそれを
どのように分割できるかや遺留分への配慮などについては、
事前にご理解した上でないと逆効果になりかねません。

配偶者がいる方は、一旦一切の財産を配偶者に相続させるとの内容と、
付言のその配分をした理由や心情を記載した遺言を残されることをお薦め致します。

法定相続の第一順位である直系卑属(被相続人の子供)が最も理解し易い内容です。

 相続税の納税資金の考慮

相続対策でこれまでよく採用された方法に、無理な借金により、
貸しマンションやアパートの建築をして財産評価額を下げるという方法があります

この方法には一定のリスクが伴い、納付する相続税額を節税する対策は危険だと言う
専門家も少なくありません。

そういう意味では、財産評価額を下げる対策ではなく、納税資金に換価できる資産、
不動産を用意することによる、納税資金準備対策が重要でしょう

換金性を高めた資産などを生前から準備しておき、相続発生後に
直ちに換金することで相続税を納付しようとするものです。

特に換金しにくい不動産等を換金化しやすいような資産構成に代えておくことが代表的です。

例えば、すぐに売却できるような更地で持っておくこと、
その間有効な活用をすることが挙げられます。

注意点は、相続税課税時点において、納税義務者(特に奥様などの配偶者)に、
換金性の高い資金が分配されるような配慮を、遺言書で記載しておくことです

資産を残す側が、困りがちなケースを想定して、
最低限やっておかなければならないことと言えるでしょう。

というのも、換金性の高い資産でも、保有している土地取引に時間がかかってしまうことが多く、譲渡所得税等の発生もあるからです。 物納する場合も物件自体が物納要件を
満たしていることが求められ、更に物納申請手続に時間がかかります。

しかも、物納の許可が下りないといったケースもあり、これは大きなリスクです。

そこで、相続税の納税のための資金準備をしておく必要性が発生するのです。

納税資金が足りない場合の対策

納税資金対策として、よくご提案させていただいている方法をご紹介します。

短期的なものとしては、

1)銀行から借入する

2)死亡退職金・弔慰金を活用

3)相続資産の売却

4)納税資金の生前贈与

5)延納・物納を利用する

があります。

ただし、短期的というのは、狙ってそうするのではなく、結果的にその必要性があったということが大半です。

出来る限り計画的に、長期的な視野で取り組まれることをお薦めします。

長期的な対策として、計画的に取り組めることの代表例を挙げると、

1)生命保険に加入する

2)土地活用により賃貸収入を得る

3)賃貸用不動産を譲渡する

どれも専門家にアドバイスを求めた方が無難な対策です。

信頼できるアドバイザーを探しましょう

納税資金の過不足分析 

必要となる納税資金に対して、相続財産と相続人所有の金融資産
(現預金・生命保険金・上場有価証券等)がいくら準備できるかを試算し、
相続税を支払う能力があるかチェックすることが出来ます。

不足していれば、対策が必要でしょう。

一般に、相続税の支払能力の判定は、

納税資金÷相続税×100

で求めます。

この比率が100%よりも小さければ小さいほど対策が必要です。

納税資金の不足を解消するためには、

(1)節税対策により相続税額を軽減すること

(2)納税資金対策により資金を増やすこと

の両面からのアプローチが必要です。

納税資金対策では「生命保険」の上手な活用が最も有用です。

終身保険の有期払いで加入すれば、
確実に死亡保険金を相続税の納税資金に充当できます。

支払保険料は相続税の分割前払いと考えることもできます。

これにより、所有土地等を譲渡または物納することなく、相続税の納税を
完結させることもできます。

 節税対策

安全に相続税を節税する対策については、大きく分けて2つの方法があります。

1つ目は、生前贈与を中心とした相続税の節税のための対策です。

2つ目は、相続税の納税資金を確保するための対策です。

他にも方法はありますが、時代の流れや、制度によって変わるものが多くあるため、
その都度ご紹介したいと思います。

生前贈与によって相続税を節税する

生前贈与をすることで、相続時に発生する相続税
そのものを減らしていこうと考えていく方法です。

これをすることによって、当然、相続発生後の財産が減ることになりますから、
相続税評価総額が減額され、結果として納めるべき相続税が減るというものです。

具体的には、相続人に保険料を毎年贈与し、その資金で子供が契約者となって
契約することにより相続財産の事前移転をします。

そのためには「贈与事実」の心証が得られるものを確実に残しておくことに注意しましょう。

・毎年、「贈与契約書」を作成し、保存する

・贈与税申告書を保存する

・110万円以上の贈与をして、毎年申告書を提出し、納税する

・贈与者は生命保険料控除を活用しない

・その他、贈与の事実を認定できるもの 

受贈者専用の預金口座から保険料の支払をし、通帳・印鑑の保管は
受贈者がする以上のほかにも、ケースによって注意することがありますので、
活用については生命保険会社などにご相談下さい。

※なお、相続開始前3年以内の贈与は相続財産に含まれるため、節税効果はありません。

生命保険を使って納税金を準備する

これは納めるべき相続税を確保していこうと考えていく対策です。

相続税を不動産などの資産を処分せずに一括で現金で支払えるように、
生命保険金を利用して納税のための資金を準備できるようにするのが、
このタイプの対策です。

具体的には、被相続人の加入している生命保険の受取人を相続人にしておけば、
相続人には死亡保険金が入ってきますので相続税を支払うことができます。

さらに、生命保険金の場合、[500万円×法定相続人の数]の金額は相続税が
かからないことになります(生命保険の非課税限度額といいます)。

保険契約者および被保険者を相続人として、保険料負担者を被相続人とする
契約であれば、相続が開始したときに生命保険契約に関する権利を相続人が
引き継ぐことになります。

生命保険契約に関する権利に対しては、解約返戻金相当額を持って
評価されることとなっています。

なお、その権利自体は相続人が引き継いでいくことになりますが、一定期間までは
解約返戻金の額が低く抑えられ、一定期間経過後に解約返戻金が増加していくような
保険契約であれば、それまでに支払っていた分に関してはかなりの節税効果が
期待できます。

相続税対策は、自分の置かれている状況を正確に判断し、
どの相続税の対策が状況に合っているかを見極めて、実行していくことが大切です。

 納税(資金)対策

相続税は金銭で一括納付をすることが原則です。

不動産やその他の動産で納付することは条件付きとなりますので、
売却して金銭に換価することが本望ではないことが多いでしょう。

そのような場合に、対策としてよく使われるのが「終身保険」です。

保障が一生続くため、死亡時に必ず保険金が受け取れ、現金が手元に残るのです。

生命保険を活用するメリット

1)受け取る死亡保険金には非課税枠があります

契約者、被保険者が同一人で、死亡保険金受取人が法定相続人の場合、
受け取った保険金は「みなし相続財産」として、相続税の課税対象となります。

そのうち法定相続人数×500万円が非課税になります。

例えば、夫が死亡して妻が2000万円の保険金を受け取った場合、
子供が2人いたとすると、法定相続人3人×500万円=1500万円が非課税となり、
残りの500万円が他の相続財産と合算され、課税対象となります。

2)加入と同時に納税対策ができます

保険に加入したのと同時に資金が準備できることになります。

銀行預金などの積立とは大きく異なる部分です。

3)保険金受取時まで課税は発生しません

生命保険の配当金は、受け取った保険金と一緒に相続財産として扱われ、契約途中で課税されることがありません。

一方で、銀行預金で利息に20%の源泉徴収がされてしまいます。

4)現金で受け取れます

相続税は、原則として相続発生から10ヶ月以内に金銭で納付する必要があります。

もし不動産などの固定資産だけを相続したような場合、売却して資金を調達することも少なくありません。

保険金は現金で受け取れるので、固定資産の売却をせずに済むかもしれません。

もちろん、相続税の納付には、延納や物納という方法もありますが、利子もかかる上、手続が面倒です。

なお、固定資産に全く手をつけずに相続税納付を行いたいのであれば、受け取る死亡保険金にかかる相続税分も計算に入れて、保障額(保険金額)を決める必要があります。

現物分割に生命保険を利用する

遺産の大半が不動産だという場合、相続人が数人居れば、家を分割するわけにもいきません。

現実的にはよく発生するケースで、このときに生命保険を上手に使うことが出来ます。

この場合不動産は遺言で一人に遺贈し、他の人を生命保険の受取人に指定して、
その死亡保険金を分配することで帳尻を合わせられるのです。

ただし、保険金額は遺留分の額以上にしておくことが大事です。

代償分割に生命保険を利用する

商売をしている場合、遺産分割すると商売ができなくなってしまうということがあります。

このような場合、「代償分割」という方法が使われます。

「代償分割」とは、相続人の一人が財産を受ける代わりに、
他の相続人には相当の金銭や別の資産をその代償として支払うというものです。

この場合、代償分割の支払いのための資金を生命保険で準備することが出来ます。

財産を受ける人を死亡保険金受取人に指定しておけば、
一度受け取った保険金を他の人に支払うことができます。

同族会社などの場合、株式の多くを社長が持っているケースが多いようです。

また、会社を子供に継がせたいと希望している経営者も多いようです。

こういった場合、社長が死亡して保有していた株式を会社の経営に関係のない、
後継者以外の相続人に分割すると、その後それらの相続人から会社に対して
自社株の買い取り請求を受け、経営を圧迫するといった事態にもなりかねません

会社経営を安定的に承継するためには、後継者一人に自社株を
相続させることが必要となります。

そこで、生命保険を活用した遺産分割対策が有効になるのです

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