相続について

事業継承

 相続税対策

事業承継で経営者の方が最も心配されるのが相続税対策です。

特に、中小企業の多い日本では、非上場株式や非上場企業の評価が重要ですが、
これが困難だと言われているのです。

非上場会社の評価は、相続税・贈与税の計算上「取引相場のない株式」に分類されます。

大きく分けると、その評価方法は

  • 純資産価額方式
  • 類似業種比準方式
  • 配当還元方式

に大別されます。

純資産価額方式

純資産価額方式は、会社の総資産や負債を相続税の評価に洗い替えて、その評価した総資産の価額から負債や評価差額に対する法人税等相当額を差し引いた残りの金額により評価する方法です。

類似業種比準方式

類似業種比準方式は、類似業種の株価を基に、評価する会社の一株当たりの配当金額、利益金額及び純資産価額の三つで比準して評価する方法です。

配当還元方式

主に経営に従事しない少数株主に対する評価方法で、過去1~2年の配当金額に基づいて
評価する方法です。
会社の後継者となる相続人にはまず適用されません。

これらの評価方法は、会社の規模(資産総額・従業員数・売上高等)によって、以下のように変わります。

大会社

原則は類似業種比準方式(納税者の選択により純資産方式も可)

中会社

類似業種比準方式と純資産方式の併用方式(併用割合:類似60%~90%、
純資産40%~10%)

小会社

純資産方式または類似業種比準方式と純資産方式の併用方式(併用割合:50%)

事前に持株や不動産を贈与したり、他人に売却するなど、長期的効果が期待できる
対策をすることが重要です。

また、経営者自身が所有する株式や、経営している会社の自社株や不動産等の財産は、
今後の事業継続を考えて後継者へ集中させて引き継がせること重要です

不動産の場合であれば、経営者名義のものを会社名義、あるいは後継者名義にする
必要があるでしょう。

親族や後継者に売却する形式で同時に節税効果を狙うこともあります。

いずれにしても、どのような財産を引き継ぐかは,相続人となる親族も含めて、
よく話し合い、お互いに納得することが大事です。

これを怠ると,会社経営を揺るがす事態になることもよくあります。

法律面、税金面、経営面で専門家に相談をするのが望ましいでしょう

 種類株の活用

中小企業の定款整備・内容確認

経営者が亡くなった場合、経営者(会社)=所有者(株主)ではなくなることがあります。

また、株主に相続が発生した場合、経営者が全く知らない株主が登場するということも考えられます。

こういったときに、定款を整備しておけば、ある程度トラブルを予防することが可能なのです。

定款は分かりやすく言うと、会社と株主との「契約書」みたいなものです。

「定款」をきちんと整備しておかないと、事業を継ぐ後継者の方が思わぬところで失敗をする可能性があります。

経営者=所有者のうちに、定款の整備をしておきましょう。

相続人から株式会社の株式を買い取る規定や、特定の株主からだけ株式会社が自己株式を取得し、他の株主には自己株式の買い取り請求をさせない定款変更をするケースがあります。

種類株式の発行に関して

こういった際に最近良く使われるのが、種類株です。

種類株とは、会社法の規定の範囲内で定款に定めることによって、株主の権利について普通株式とは違った権利を付与したり、株主の権利の一部を制限または剥奪した株式のことです。

種類株式は、以下の9つの権利について異なった株式を発行することが可能です。

もちろん、9つの権利のうち、いくつかの権利を重複して付与したり、いくつかの権利を制限または剥奪をした株式を発行することも可能です。

1.剰余金の配当 (配当を多くすることなど)

2.残余財産の分配 (会社を清算したときに分ける財産の分配)

3.議決権制限種類株式 (参加できない決議事項を設けること)

4.譲渡制限種類株式 (売買などでの取得に会社の承認を必要とすること)

5.取得請求権付種類株式(株主がこの株式の取得を会社へ請求することができること)

6.取得条項付種類株式 (一定の事由が生じたときに会社がこの株式を取得できること)

7.拒否権付種類株式 (いわゆる黄金株。特定の事項につき株主に拒否権を持たせること)

8.全部取得条項付種類株式(株主総会の決議で会社がこの株式をすべて取得できること)

9.取締役・監査役選任権付種類株式 (この株式を持つ株主から取締役や監査役を選ぶことができること)

種類株式を発行する場合には必ず、各種類株式の発行可能株式総数も一緒に定款で定めてく必要があります。

種類株式の発行の定款変更決議のときにあわせて定款変更をお勧めいたします。

ここでは、種類株式のメリットである「譲渡制限」を例に解説していきます。

たとえば、株主総会の決議で拒否権を持つ拒否権条項のついた種類株式が好ましくない株主に渡ると会社の経営上、不都合が生じる場合があるので、譲渡制限を設定しておくことが効果的です。最近の事例を引くと、ライブドア社によるニッポン放送株大量買い付けや、村上ファンドが阪神電鉄の筆頭株主になるなど、M&A(企業の合併・買収)が活発化しています。

もちろん、M&A自体は一概に否定されるべきではありませんが、株主や従業員、取引先などのステークホルダー(利害関係者)にとって望ましくないものや、敵対的な買収もあります。

種類株式の譲渡制限は、このような敵対的な買収に対する場面で、効果を発揮します。

また、株式に譲渡制限を付ける以外の対策として、「黄金株」や「取得条項付株式」などが考えられます。

さらに、種類株式を発行することができない状況などでは、相続等があった場合の売渡請求に関する規定を定款に定めておくなどの対策も考えられます。

 新たな事業承継税制

平成20年2月に「中小企業における経営承継の円滑化に関する法律案」という法案が国会に提出されました。

これによって、平成21年度税制改正で「取引相場のない株式などに係わる相続税の納税猶予制度」を中心とする事業承継税制が創設されました。

税制改正の背景

1)これまでは生前贈与で後継者に移転した自社株式についても、遺留分の基礎財産に加えられていたため、遺留分侵害分を取り戻されるということがよくありました。

つまり、自社株式などを後継者へ移転した分については、遺留分権利者から遺留分の減殺請求をされた場合に、遺留分の算定の基礎財産に加えられ、遺留分侵害分が非後継者に移転されてしまうという危険性があったのです。

2)相続税の算定にも問題点がありました。

現行の税法においては、贈与時の評価額が相続税の算定時に合算されますが、民法上の遺留分の算定については「相続開始のときにおける価額」となっています。

そのため、生前贈与後に後継者の貢献により株式価値が上昇すると、上昇した分だけ相続時点の遺留分減殺請求の額が増え、後継者の事業承継意欲を阻害していました。

3)相続税の納税資金が捻出できないというケースがありました。

相続により事業承継がなされる場合に、相続財産の大部分が、事業用の不動産と自分が運営する会社の株式であるというケースがよくあります。こういった場合に、それらの資産を処分して換金することができないため、相続税を支払うことができないという問題が頻発するという状況がありました。

円滑化法による事業承継税制で何が変わったか

「経営承継円滑化法」は、事業承継の阻害要因だった民法の遺留分制度に対しての特例です。

また、「株式等に係る納税猶予制度」は、事業承継の阻害要因だった相続税負担に対しての納税猶予措置なのです。

上記の2つの課題に対して以下の導入効果が期待されています。

1)これらの制度を活用することにより、一定の要件を満たす後継者へ先代経営者から贈与された自社株式、その他一定の財産について、遺留分算定の基礎財産から除外することができるようになります。

その結果、事業承継に不可欠な自社株式などの生前贈与が確実に行うことができるようになります。

2)改正により、遺留分の算定時に、生前贈与株式の額を当該合意時の評価額であらかじめ固定できるようになります。

その結果、生前贈与後の後継者の貢献による株式価値上昇分は遺留分減殺請求の対象外となり、後継者の経営意欲も阻害されることがなくなります。

3)事業承継税制では、会社の運営に必要な株式は、その課税価格の80%に対応する相続税について、納税が猶予されます。納税猶予を受けた後継者が死亡した場合や、経営承継円滑化法の規定に従った方法で次の後継者に株式を贈与することで、納税猶予を受けていた相続税が免除されます。つまり、事業承継に必要な株式の80%部分については、後継者へ相続であったり、生前贈与を続けることで、相続税の負担はなくなります。

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