2021年4月28日の第204回通常国会にて新たな法律「相続土地国庫帰属法」が成立し、「相続土地国庫帰属制度」が2023年4月27日から始まりました。
「相続土地国庫帰属制度」とは、相続が発生した際に、誰も相続したくない土地を国が引き取ってくれる制度です。
背景 2016年時点の所有者が不明な土地の面積が九州以上の面積、約410万haほどになっていることが、2017年12月に公開された少雨者不明土地問題研究会(一般社団法人国土計画協会)の発表で明らかになりました。空家においては犯罪に使用され、災害時の復旧や公共工事の妨げの要因の一つにもなり、深刻な社会問題となっています。
法改正の概要
政府は相続時の登記を義務化し罰則を設けて、所有者の明記を義務付ける不動産登記法を改正、相続人が居ない土地については国が引き取る法律を作りました。
土地の主な条件
・更地(建物や工作物、車両、樹木、担保権等の無い土地)
・境界が明らかな土地
・土壌汚染がない土地
・隣接する土地との争いなどがない土地
・通路その他により第三者が使用していない土地
※その他詳細は法務局のホームページでご確認下さい。
費用
・審査手数料と負担金(10年分の土地管理費用相当額の予定)が必要
国庫帰属までの流れ
- 承認申請(窓口は法務局)
- 法務大臣(法務局)による要件審査・承認
- 審査手数料と負担金納付
- 国庫帰属
※承認申請の申請権者は相続または遺贈により土地を取得した者、共有地の場合は共有社全員で申請する必要がある。
ケーススタディ
両親が他界し相続が発生したが、子どもたちは夫々マイホームを所有しており、実家を相続するものが誰も居ない。売却しようにも需要が無く不動産会社が相手にしてくれない。
そんな時に利用できるのが「相続土地国庫帰属制度」です。
先ずは相続人で話し合って、国に引き取って貰うことを決めます。建物や植栽、ブロック塀等を解体撤去し、土地家屋調査士に境界の確定(確定測量)してもらいます。土地の相続人が国庫帰属の承認申請を行い引き取ってもらいます。
かかる費用は、建物等解体撤去工事、建物滅失登記費用、測量費用、審査手数料と負担金となります。
市街地で試算すると、建物が30坪、土地が60坪とした場合の費用の目安は建物解体工事費用約150万円、確定測量費用約40万円、建物滅失登記費用約5万円、審査手数料は不明ですが、市街地の200㎡の土地管理費用は約80万円が目安となっています。これらを合計すると概ね280万円 となります。
田舎に実家がある場合、山林や農地がどうなるかですが、国は引き取る方向です。山林は更地にする必要はないので樹木は大丈夫ですが、果樹園は管理が面倒なので引き取らない様です。管理が出来ないものや管理に多大な労力を要するものは引き取らない方向なので、崖がある土地も場合によっては拒否されます。
共有で法人が持ち分を持っている場合も、相続人が主体で国庫帰属を希望し法人が同意すれば国は引き取る方向です。
まだ詳細が決まっておらず、不明点も多いため、詳細規則が定められた際に本コラムの内容と異なる場合は何卒ご容赦下さい。
将来相続が発生した際に相続の放棄ををお考えの方は、新たな制度を利用して国に引き取って貰うことも検討しましょう。
参考ページ
法務省
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html
相続土地国庫帰属制度 – 法務局
https://houmukyoku.moj.go.jp/mito/content/001354310.pdf
相続土地の登記義務化と 国庫帰属制度 – 国民生活センター
https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202112_04.pdf
相続登記義務化について